Katz'sに初めて行ったのは、観光客として有名なパストラミサンドを食べに行った時だった。
帰り道、近くの公園を散歩していたら地元の女性に声をかけられた。「どうだった?」と聞かれて「美味しかった」と答えると、彼女は他にもいい店があると教えてくれた。2nd Ave DeliにSarge's。そういえば街の所々で「Deli」や「Delicatessen」の看板を見かける。
ふと気になって、NYCのデリ文化について調べてみた。
デリの歴史〜新天地で生まれたパストラミサンド〜
Delicatessenはドイツ語で「美味しいもの」を意味する。1880年代から東ヨーロッパのユダヤ人が大量に渡米してマンハッタンのLower East Sideに集まったのがきっかけで普及した。確かに言われてみれば、Katz's、2nd Ave Deliやその他有名店もその地域にある。
面白かったのは、今観光客に人気の脂身たっぷりのパストラミを山盛りにしたサンドイッチは実は伝統的なユダヤ料理ではなく、移民が新天地で創造した新しい食文化らしい。当時のアメリカには、ヨーロッパでは考えられないほど安価な牛肉が大量に手に入ったため、それをルーマニアやトルコの保存技術でパストラミやコーンビーフにして売るようになったのが始まり。
デリの現在
1930年代が最盛期でニューヨークには推定3000のデリがあり、ユダヤ人が安心して集まれる場所であるとともに情報交換やビジネスの場でもあったという。
今では郊外への移住、健康志向の高まり、運営コストの上昇に加えてCOVID-19がさらに追い打ちをかけて、Carnegie DeliやStage Deliといった伝説的な店も閉店し30店ほどしか残っていないらしい。
感想
ブリスケット、コーンビーフ、パストラミ、どれもとても美味しい。
お店によって特徴がある。Katz'sは厚切りで脂身も多くかなりボリューミー。2nd Ave Deliも厚さとしてはボリューミーなことに変わりはないがカットが極薄切りなせいか相対的に軽く感じる。どちらのタイプも食いしん坊な自分にとっては、肉だけが大量に挟まっているサンドイッチを頬張れるなんて夢のようだ。
面白かったのはKosher認定について知ったこと。伝統的なユダヤ式のお店を認定する制度で、調理工程や提供できる品に制限が設けられているらしい。肉と乳製品を同時に提供できないという条件があるので2nd Ave Deliにはチーズケーキはないし、食後のコーヒーにミルクも入れない。肉と乳製品を同時に食せないので肉なしチーズピザはOK、チーズバーガーはNG、そういった感じらしい。こういうのを少し調べてから行くだけでメニューの見方や注文の仕方も変わってくる。
ニューヨークで暮らしていると、街のあらゆる場所に移民の歴史が刻まれている。チャイナタウン、リトルイタリー、コリアンタウン。それぞれの地区が異なる移民の波によって形成されている。デリもその一つであることを知るいいきっかけになった。
いくつかのデリを訪問して、restaurantコラムとして残していきたい。